
仙台から新幹線で盛岡駅まで向かう。梅雨入りしてから最初の週末で、しっかりとした長雨が降り続いていた。
岩手への出店は初めてだったが、ここはイーハトーブ。アウェーな気配はしない。
開場のアナウンスに数秒遅れて、お客さんがやってきた。
去年あった仙台でのイベントから継続して来てくれる方、仙台にゆかりがある方、意欲に溢れる学生さんなど、本当にさまざまな方が興味を持ち、作品を手に取ってくれた。本当にありがたいことだ。
その中で、この春に第9回仙台短編文学賞で大賞を受賞した小説「息をする夜半(よわ)」の感想を伝えに来てくださる方々がいた。

小説「息をする夜半(よわ)」は、ALSの在宅介護を主軸にした純文学のお仕事小説だ。
介護と言えど、ALSの在宅生活は人工呼吸器や吸引など、とても医療色が強い。前に訪問看護師などをしていた経験から着想を得て執筆した。(あと実は、介護スタッフに医療行為の一部を教える「医ケア教員」の資格も持ってる。実務ではちょっとしか使わなかったが)
個人間のやりとりなので詳細は書かないが、わたしはあるご婦人にとても感激した。
ご自身の経験や当時の思いと照らし合わせながら、作品を深く読んでくださっていた。文章を読まれるのはいまだ気恥ずかしいが、読み込む大変さを感じている今だからこそ、ひときわ感謝の気持ちが湧いてくる。
自然とわたしも、難しい問題に手をつけてしまったような思いに駆られていたことを話していた。人の生死観、東北という地域性、育児や介護の社会問題など、どれも手に負えるようなものではない。短編とくればなおさらで、結局、〈了〉を打つまでだいぶ時間を要してしまった。
ご婦人は、選考委員の木村先生が「これしかない」と大賞に推しているのを見て、作品が掲載された雑誌『Kappo 仙台闊歩』をお買い求めに。木村先生に作品を読んでいただけたことでひらけた世界があまりにも広大で、「そんな(たいそうな)人間ではないんです」などとゴニョゴニョ言いながら、雑誌へのサインに応じた。謹んで書かせていただいた。
(そしてわたしが看護師ということを知っていらっしゃって、化粧品のような上品な箱に入ったハンドソープを送ってくださった。岩手のお菓子などとあわせて。お心遣いに感謝するばかり……)
今日の出会いがとても励みになったことを、メッセージとして残した。
書き損じの恐怖に耐えながらも、紙の本があるのはいいなと思った。
web上では味わえない恐れと喜びがある。ZINEやリトルプレスなどの自主制作物ともどこか違う。
根本的に自信がないのだ。誰かに「よかった」と言われて初めて安心できる。この流動的な業界で、作品への声が唯一の寄る辺だ。
雑誌『Kappo 仙台闊歩』にも深く感謝している。作品を全文掲載してくれた商業誌は、本誌が初めてだった。出版社に載せる価値があるとみなしてもらえたようで、自主制作物とは違う安心を得た。
(どうやって自信をつけていくか、あるいはこのままでいいと振り切るのかは、今後も課題。文章の質を高めながら、解決していけたらいいなと思う。とても長くなりそう)
ひさしぶりの岩手は、そんな出会いに恵まれた。また来年も縁があれば行きたい。
【おまけ】
新幹線に乗る前に、盛岡駅でいただいたお寿司。今はほやが旬!岩手のうにも美味しかった。

